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ウクライナ:日本国民に向けたゼレンシキー大統領演説(2022年3月23日)

〔私訳〕


敬愛する細田様!

敬愛する山東様!

総理大臣岸田様!

尊敬する日本国会議員の皆様!

親愛なる日本国民の皆様!


私、ウクライナ大統領にとりまして、日本国会史上初となる皆様へのスピーチは大きな名誉にございます。


私たちの首都は、8193キロメートルの距離によって隔てられております。空路で平均15時間かかります。航路によって。しかし、いかなる距離が私たちの抱く自由の気持ちのあいだにあるというのでしょうか。私たちの、生きたいという希望のあいだに。私たちの、平和を希求する思いに。


2月24日、私にはいかなる距離も見出だせませんでした。私たちの首都のあいだに1ミリメートルたりとて。私たちの気持ちのあいだにわずか1秒たりとて。皆様がすぐに私たちを助けに駆けつけてくださったからです。このことに私は感謝しております。


ロシアがウクライナ全国の平和を破壊したとき、私たちは即座に目にしました、世界が本当はどうなっているかを。本当に、戦争に反対していると。本当に自由を求めていると。本当に全世界の安全を思っていると。本当にそれぞれの社会の調和的発展を願っていると。日本はアジアにおいて、このような立場のリーダーとなりました。皆様は即座にロシアが展開したこの残虐な戦争の阻止のために動き出しました。皆様は、即座にウクライナの平和実現のために動き出しました。このことが、真に大事なのです。この世の一人ひとりにとって大事なのです。ウクライナの平和なくして世界のいかなる人間も確信をもって未来を見つめることなどできないからです。


皆様一人一人が、チェルノブイリがなんであるかご存知です。ウクライナにある原子力発電所で、1986年に大爆発を起こしました。放射能が拡散しました。その影響がこの星の至るところで観測されています。チェルノブイリ原発の周囲30キロメートルの区域がいまだ閉鎖されています。そこは危険なのです。閉鎖区域に生い茂る森林は、発電所爆発の影響を沈静化したときからそこにあり、1千トンもの汚染物質や瓦礫、機材が埋没されています。直に地中にです。


2月24日、まさにこの土地をロシアの装甲車両が通過しました。放射性の灰を空中に巻き上げて。チェルノブイリ発電所が占拠されました。武力によってです。ご想像ください、大災害を引き起こした原子力発電所がです。破壊された放射炉を覆う閉じ込め建造物がです。放射性廃棄物の現役の貯蔵施設がです。ロシアはこの施設を戦争の場に変えました。この30キロメートルの領域を、この閉鎖区域を、ロシアは我が国の防衛隊に対する新たな攻撃の拠点として利用しているのです。


ロシア軍がウクライナの国土から退却したのち、彼らがチェルノブイリの土地にもたらした被害がいかなるものであったか調べるには、何年もかかるでしょう。放射性物質の貯蔵施設がどんな被害を被ったか。全世界に放射能の灰がいかに拡散したかもです。


紳士淑女の皆様!


私たちの国土には稼働中の原子力発電所が4箇所あります。原子炉が15基です。そして、そのすべてが危険に晒されているのです。ロシア軍はすでに戦車砲によってザポリーッジャ原子力発電所を攻撃しました、欧州最大の原発をです。戦闘が、数百の産業施設に損傷を与え、その多くがとりわけ危険なのです。砲撃はガス石油ラインも脅かしています。炭坑もです。


最近、ロシア軍はさらにウクライナのスーメィ州にある化学工場にも砲撃を加えました。そこでは、アンモニアの流出が生じました。私たちには、化学兵器、なかんずくサリンの使用による攻撃の可能性があると報告を受けました。シリアであったようにです。


ロシアがさらに核兵器を使用した場合、どう反応すべきかが世界の政治家たちの議論の主要な議題の一つになっております。世界のどんな人間のどんな確信も、どんな国のどんな確信も、完全に破壊されました。


我が国の将兵はすでに28日間も英雄的にウクライナを防衛しています。28日間の、規模において世界最大である国家による全面的侵攻です。しかし、能力においては最大ではありません。影響力においては最大ではありません。道徳面では、最小です。


ロシアはウクライナの平和な町々に1000発以上のミサイルを撃ち込みました。数え切れない爆弾を落としました。ロシア軍は、数十の我が国の都市を破壊しました。いくつかは完全に焼き払われました。ロシアの占領下に置かれた多くの都市や村では、我々の人々は自分の殺された親類や友人、隣人をきちんと埋葬することすら許されません。壊された建物の庭や道端、ただ可能な場所に葬ることを余儀なくされているのです。


1000人近くが殺されましたが、そのうち121人は子供です。


9百万近くのウクライナ人が、ロシア軍から逃れるために我が家を、故郷を捨てることを強いられました。我が国の北部、東部、南部は人気がなくなってきています、人々が死の脅威から逃れているからです。


ロシアは我が国に対する海上封鎖を実施しました。普通の通商路です。

世界のほかの潜在的な侵略者たちに、自由な国民を圧迫するにはどうすればよいか、海上封鎖をして手本を示しているのです。


紳士淑女の皆様!


今日、ほかならぬウクライナが、そしてパートナー諸国と我々の反戦連合こそが、世界の安全が最終的に破壊されることはないということを保障し得るのです。


世界には人々の自由のための支えが存在することを。人々の自由な生活と社会における多様性を守るために。国境を防衛するために。我々に、我々の子供と孫たちにまだ平和があることを確信するために。


皆様はご覧になりました、国際機関が機能しなかったことを。国連も安全保障会議もです。彼らが何をできるでしょう? 改革が必要なのです。彼らには誠意の注射が必要です。きちんと機能させるために。現実に問題を解決し、現実に影響力を行使するように、ただ議論しているだけでなしに。


ウクライナに対するロシアの戦争のために、世界は不安定化しました。世界は、多くの新たな危機の敷居に立っています。明日がどうなるか、今自信をもって言える人がいるでしょうか。


世界市場の動揺は、原料輸入に頼るすべての国に問題をもたらします。経済的および商業的挑戦は、前代未聞のものです。重要なことは、この惑星の、顕在的か潜在的かを問わずあらゆる侵略者が、彼らによって展開される戦争によってどれほど強烈な罰が下るか、そして彼らにとっても戦争は開始するに値しないということを確信するか否かが今まさに決まろうとしているということです。彼らにとっても平和は破壊すべきでないということを。そして、絶対的に論理的で正しいことは、責任ある国家は平和のために団結するということです。


私は皆様の国家に、この歴史的瞬間における基本に則った姿勢に対し感謝申し上げます。ウクライナへの現実の支援に。皆様はアジアで真っ先に平和の回復に向けてロシアへ本当に強い圧力を掛け始めてくださいました。ロシアへの制裁を支持してくださいました。私は、皆様にこの行動を続けていただくよう呼び掛けます。


アジア諸国の、皆様のパートナーたちの、状況の安定化に向けた努力を糾合するよう呼び掛けます。ロシアが和平の道を探るように、私たちの国、ウクライナへのその残虐な侵攻の津波をやめるように。ロシアとの通商における禁輸も必要です。企業をロシア史上から撤退させ、ロシア軍に資金が回らないようにすることが必要です。私たちの国を、私たちの防衛者たちを、私たちの戦士たちを、ロシア軍を押し留めている者たちをさらに支援することが必要です。今すぐに考え始める必要があります、ウクライナの再建を。ロシアによって破壊された町に、ロシアによって蹂躙された地域に生活を取り戻すことを。


みんな、自分が住んでいたところに戻らなければなりません。育った場所に。こここそ我が家と感じられる場所に。自分の小さな故郷に。私は、皆様がその環状を理解してくださると確信しています。このことが必要であることを、自分の土地への帰還が必要であることを。


私たちは新たな安全保障について取り組まなければなりません。平和に対する脅威が生じたときには、予防的に、そして力強く機能することができるように。


このことが、今ある国際機構の土壌になし得るでしょうか。こんな戦争の起こったあとでは、まずあり得ません。新たな新しい道具を作る必要があります。新しい保障を。予防的かつ強力に、いかなる侵略に対しても機能するものを。本当に助けとなるものを。日本のリーダーシップはその完成において他に代替されざるものとなるはずです。ウクライナにとっても、世界にとっても。私はこのことを皆様に提案したいと思います。


世界が再び感じられるように、確実性を。明日という日がどういうものとなるか。明日が訪れること、それが安定して平和なものとなることを。私たちにとっても、未来の世代にとっても。


紳士淑女の皆様!

日本国民の皆様!


皆様とともにあれば私たちは多くのことを成し遂げられます。できると思うこと以上のことさえできるのです。


私は、皆様の発展の燦然たる歴史を存じております。いかに皆様が調和を築き、守ることができるか。原則を維持し生命を尊重しているか。環境を保護しているか。その根には、皆様の文化があります。ウクライナ人が本当に愛している文化です。私はただ上っ面のお世辞を言っているのではありません。本当にそうなのです。


2019年、私がウクライナ大統領に就任してちょうど半年後、私の妻であるオレーナは視覚障害のある子供のためのプロジェクトに参加しました。オーディオブックを作るプロジェクトです。日本の昔話が読まれました。ウクライナ語でです。私たちに、子供たちにとってよくわかる話だったからです。そして、この話は、皆様の達成したことに私たちが寄せる注目の、ウクライナ人の寄せる注目の大海におけるほんの一滴に過ぎないのです。


価値観において、私たちは皆様に似ています、両国を隔てる大変な距離にも拘らず。距離など、実際には存在しないのです。なぜなら、私たちには等しく心の暖かみがあるからです。ともに担う努力によって、ロシアに対するさらに大きな圧力によって、私たちは平和へ漕ぎ着けるでしょう。そして、私たちの国を再建できるでしょう。国際機関を改革できるでしょう。


そのとき、日本は今現在そうであるように、我々とともにあることを確信して已みません。私たちの反戦連合のなかに。私たち全員にとってのこの運命的時代において。


ご清聴ありがとうございます。

ありがとうございます!〔日本語で〕

ウクライナに栄光あれ!

日本に栄光あれ!


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大統領府に掲載されたウクライナ語原稿(2022年3月23日12:37掲載) [https://www.president.gov.ua/news/promova-prezidenta-ukrayini-volodimira-zelenskogo-v-parlamen-73769] (2022年3月23日閲覧).

NHKによる音声 [https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/uk/news/programs/special/202203231945/] (2022年3月24日閲覧).

ウクライナのニュースサイトin time Ukraineによる音声 [https://www.youtube.com/watch?v=PtoeIZUphys] (2022年3月23日閲覧).


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本翻訳公開時点で公式訳の活字化が見当たらなかったため参考のために掲載。段落分け、文字強調などは大統領サイトの原稿に準ずる。


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また、スピードを重視して作成した私訳であるため、日本語としてこなれない部分や翻訳として不適当な箇所、誤訳、文章の脱落の不備等は免責とさせていただきます。

2022年3月23日23:38掲載

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