フレィホーリイ・スコウォロダー「自由ニ就テ〔デー・リーベルターテ〕」(«De Libertate»)
Что то за волность? Добро в ней какое?
Ины говорят, будто золотое.
Ах, не златое, если сравнить злато,
Против волности еще оно блато.
О, когда б же мнѣ в дурнѣ не пошитись,
Дабы волности не могл как лишитись.
Будь славен вовѣк, ω муже избранне,
Волносты ωтче, герою Богдане!
自由とはなんぞ? 其にある善とは如何?
余人ら曰く、黄金の如しと。
ああ、黄金にあらず、黄金を比ぶれば、
自由に対して猶〔なお〕其は泥沼。
おお、我れ愚行を犯さぬよう、
自由を失わざるよう。
永久〔とわ〕に讃えられてあれ、おお選ばれし士よ、
自由の父よ、英雄ボフダーンよ!
ウクライナの「ソクラテス」ことフレィホーリイ・スコウォロダー(Григорій Сковорода, 1722–1794)のよく知られた詩の一つ。文学者ドメィトロー・チジェーウシケィイ(Дмитро Чижевський, 1894–1977)は、(より大きな詩の)「明らかな断片!」であると書いている。
手稿はウクライナ科学アカデミー、T・H・シェウチェーンコ記念文学研究所に保管されている。また、レオニード・マフノヴェーツィ(Леонід Махновець, 1919–93)の著書131頁にコピーが掲載されている。
かつてウクライナ人が享受した「黄金の自由」(Золота вольність, Aurea Libertas, Złota wolność)を念頭に、「自由」(あるいは「自由権」、「特権」の意味もある)を謡い、その「父」としてウクライナ国家の独立戦争の指導者ボフダーン・フメリネィーツィケィイ(Богдан Хмельницький, 1596 [97]–1657)を称揚する。曰く、彼は「〔神に〕選ばれし士」である。
フメリネィーツィケィイ将軍は、ウクライナへ独立という「自由」を得させた一方、ウクライナをモスクワの軛へ繋ぐという「愚行」を犯した点では、後代の詩人タラース・シェウチェーンコの非難を受けている。
「自由」は人間の精神性を言うと同時に、政治的意味でも言っている。当時、ウクライナ国家は存亡の瀬戸際にあった。
「黄金と泥沼」の対比は、ウクライナ・バロック文学に一般的な反対物の組み合わせである。
初めて出版されたのは詩人の没後百年の1894年、ハールキウ。執筆時期は明らかになっておらず諸説あるが、今日取り上げられることの多い文学者レオニード・マフニヴェーツィの説によれば、遅くとも1757年末かその翌年、カウラーイ村(現チェルカーセィ州、ゾロトノーシャ地区、コウラーイ村)でコザーク国家の軍事貴族、ステパーン・トマーラ(Степан Томара, 1719–94)の許にいた時代に書かれた。スコウォロダーは、31歳から37歳まで、この地主の息子の傅役を務めていた。スコウォロダーの人物に惚れ込んだトマーラのたっての願いで、彼はコザーク国家の寄騎の家に長年逗留することにしたのである。そして、多くの著作をこの地にて著した。
この詩には、スコウォロダーと雇い主トマーラとのあいだに潜む緊張関係が反映されているとも指摘される。当時のウクライナでは、1588年に定められた第三リトアニア法典がいまだ効力を持っていた。トマーラはこの法典に基づく特権を行使する立場にあったが、それは人々を農奴にする様々な「自由」を士族階級に保証していた。例えば、ある人物がある士族の土地に一定期間滞在したということが、その人物をその士族が農奴とする理由になり得た。スコウォロダーは当初は契約に基づき勤務したが、一度追い出されてから今度は契約なしで迎え入れられた。契約に縛られないことは彼に「自由」を齎したが、同時にそれが翻ってトマーラに彼を合法的に農奴にする「自由」をも生み出していたのである。
このようにスコウォロダーは「自由」の両面性をも実感したうえで、その黄金にも優るという価値を謳い、「我れ愚行を犯さぬよう、/自由を失わざるよう」に「自由の父」の名を称えたのである。
Сковорода Г. Повна академічна збірка творів / За редакцією Леоніда Ушкалова. Харків: Майдан, 2011. С. 116–117.
Сковорода Г. Повне зібрання творів: У 2-х т. Київ: Наукова думка, 1973. Т. 1. С. 91.
Чижевський Д. І. Філософія Г. С. Сковороди / Підготовка тексту й переднє слово проф. Леоніда Ушкалова. Харків: Прапор, 2004. С. 205.
Махновець Л. Григорій Сковорода. Біографія. Київ: Наукова думка, 1972. С. 130–132.
2024年5月2日掲載
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