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小石吉彦

Cahiers Serge Karcevski, 1. 綴りと音とアクセント

更新日:2020年11月2日

 響きの美しいフランス文人の名前.カミュCamus, ボードレールBaudelaire, コクトーCocteau, ロマン・ロランRomain Rolland, メイエMeillet, ジッドGide, ロラン・バルトRoland Barthes, メルロ=ポンティMerleau-Ponty, ユイスマンスHuysmans, ジロドゥGiraudoux, メリメMérimée, トロワイヤTroyat… こう並べて何の脈絡もないリストは,実は筆者がフランス語の綴りと発音の対応を覚える例証として教科書の余白に書き込んだ人名である.この摩訶不思議な正書法は,フランス語を知る人には不思議でもなんでもなく,極めて整然とした規則に従っているのだという.だからそれを習得すれば,未知の語にぶつかっても難なく正確に読めるのだそうだ.

 フランス語は筆者の憧れの言語であったが,特にそれを学ぼうという覇気も機会も見出せぬままに来てしまった.ところがある喫緊の文献を読むだけは読まねばならぬ事態が生じた.流暢にBonjour, Madameと言えなくてもいいから,とにかくテキストを読んで分かればいいのである.明確な動機は学業に結構なことだとしても,ではお茶の水のアテネ・フランセに通って…という贅沢はもとより望めない.代わりに書店へ出向き,語学参考書の棚の前で,なるべく薄くて活字が大きく,そのうえ出来ない人の気持ちが分かってくれそうな著者の作品を注意深く探し,選んだ一冊で独習を始めた.

 開始直後,気になる正書法の記述をさっそく巻末に見つけ,なるほどこれは合理的法則に基づいているから,これを覚えてしまえば百発百中の読みができるはず,と短絡したのがまず間違いのもとだった.いくら規則を繰り返してもいざ単語に対面した際に学んだはずのいかなる規則が適用されるのか,さっぱり頭と口が連動してくれない.最初のボタンを掛け違えたと分かったのはしばらく後で,この時間の浪費は痛かった.やはり単語は一段一段上っていくようにぶつかったものを辛抱強く覚えていき,語彙力が一定の水準になったら,より上等な記述で全体像を眺めてみると,法則なるものの価値が分かってくる.つまり上級の記述に頼るにはそのための資格がいるのであり,まずそれを自分の手でつかまないといけないという,ごく当たり前の教訓を得たのである.

 さて筆者のいう喫緊の文献とは1956年にジュネーヴ大学出版局から出たS. Karcevskiの遺著Manuel pratique et théorique de russeである.この本に興味を持った理由はいくつかあるが,直接の契機は千野栄一先生のエッセイを読んだことによる(ナウカ『窓』2001年12月119号).随分探しても見つからなかったが,懇意にさせていただいている古書店主氏の機転で英国のインターネット古書店から取り寄せてもらった一冊はケンブリッジ大学図書館スラヴ研究蔵書の除籍印が押され,ほとんど読まれた形跡がなかった.即座に得た印象は,これは第一に例文がすべて覚えたまま日常に使える表現で一貫しているということ,つまり教科書でよくある机上の空論的な,まず生活でこんな表現はないだろうという文言で占められているのと対照的である.第二の特徴は,この作品が刊行後半世紀以上たっているにもかかわらず,一向に古くなっていない点である.言語は世相を映す鏡である以上,辞書も学習参考書も,出た瞬間から色褪せ始めるのは致し方ないことだ.それなのに本書はその要素が微塵もない.その理由は一目瞭然,材料が終始身近な風景に限られ,時局的な社会経済事情など一切出てこない.著者はどうやら語学習得はまず生活に根差した表現からという考えをもって実践したようだ.一見ありきたりな意思疎通こそ最も難しいのであって,新聞雑誌とか論文は案外難しくないことは多くの学習者が知っている.むろん生活言語とて言語外現実の反映は免れず,本書でも全編を通じ僅かに今ならこうは書かないだろうという部分がある.それは登場人物の家族観がいささか古風であること,それから第二次大戦に関する言及若干であり,後者は誰しも時流なり立場から完全に自由たりえないし,前者もこれを理由に著者が封建的思想の持ち主とは決して断ぜられない程のものである.今日の読者にこれを読ませる場合,必要なら最小限の注釈を入れるか,ごく僅かな部分をはずせば済むことであろう.

 筆者は本書に親しむほど興味が募り,これを自分のささやかな語学講座で主力教材として使ってみたいと思うようになった.ならば詳しく読み込み,せめて覚書くらい準備しなければ―というのがフランス語学習を思い立った理由である.

 ところが折角始めたフランス語独習は,まず上述の正書法で躓き,その後も導入部で挫折しては離着陸を繰り返すという,これもよくある語学の悪循環に陥った.自分の能力にも失望したが,本書を研究するうち,ある難点にも気づいた.本書の他ならぬ売りである,動詞活用のタイプ分類がそれである.

 カルツェフスキーは分類という試みをただ学習の便宜と考えず,「対象となる動詞相互を束ねかつ動詞を他の語ともつなげる糸を見出すこと,つまりは体系を明らかにする」論理と見なしている(後述の文献リストKarcevski S. 2004の論集2巻所収И.И.Фужерон巻頭論文p.9参照).そしてカルツェフスキーの提案する新しい分類規準は生産性продуктивностьという概念で,生産的とはその特徴を備えた語が今後も増え,非生産的とはそういう成員が増えないことを言う.動詞の類別は不定形と活用を規準に,まず生産的タイプI – Vの5類が次のように峻別される.Manuelの199頁にある記述をそのまま書き出してみよう;I. -а-ть; -а-ю, -а-ешь: игр-а́-ть; игр-а́-ю; гул-я́-ть; гул-я́-ю; II. -е-ть; -е-ю, -е-ешь: бел-е́-ть; бел-е́-ю; III. -ова(-ева)-ть; -у(-ю)-ю, -у(-ю)-ешь: торг-ова́-ть; торг-у́-ю; гор-ева́-ть; гор-ю́-ю; IV. -и-ть; -ю, -ишь: говор-и́-ть; говор-и́шь; кур-и́-ть; кур-ю́, ку́р-и-шь; V. -ну-ть; -н-у, -н-ёшь: толк-ну́-ть: толк-н-у́, толк-н-ёшь; сту́к-ну-ть; сту́к-н-у, сту́к-н-ешь. これら生産的な5類に加えて非生産的7類が区別され,著者自身により後者に約400語の動詞が列挙されている.

 実はカルツェフスキーの言う生産性なる概念をよく理解するには,今見ている教則本Manuel pratique et théorique de russeだけでは十分ではなく,その理論的根拠となった同じ著者の別の作品を丁寧に読まなければならない.それは到底拙文の枠を越えて今後の課題である.著作は仏語で1927年に出ていて,下記文献リストのKarcevski S. 2004. Карцевский С.О. Система русского глаголаがその露訳である.著者の本国でようやく出た2巻選集の1冊に収録され,上記の千野先生の論述は選集とその周辺事情を書評形式で述べたものになっている.また同エッセイの指摘によると,カルツェフスキーの動詞分類はロシアの公的なアカデミー文法における動詞の記述に採用されていて,かつカルツェフスキーの亡命者という立場がその業績の正当な評価に影を落としているという.

 そして筆者がまさにこの分類が問題と言ったのは,カルツェフスキーが単なる学習方法論のみならず学術的観点から動詞を有機的に束ねる論理のうえに創案した動詞の総計12部類それ自体が,入門教程に取り組む学習者にはいささか重荷にならないかいう危惧である.

 このカルツェフスキーの分類とは異なり,筆者が用いる接近法―といってもその新機軸を打ち出そうというのではなく,誰もが採用していて自分もそう教わった方法だが,それははるかに簡単である.周知のことゆえ不要かもしれないが,ざっと略述すると動詞はまず2つの活用に分けられる.第1の活用に属する動詞は語尾が -ю, -ешь, …-ютであり,第2の活用に属するものは語尾が -ю, -ишь…-ятである.例えば "чита́ть" は第1の活用であり,"говори́ть" は第2の活用である.この第1と第2に分けるのは,どちらにも入らない動詞は接頭辞を持たない語なら広いロシア語の世界でたった4語しかないのだから,この2分法は有効である.さらに第2の規準として,動詞はアクセント・タイプがその位置により3種類に分けられる.タイプAには語幹固定アクセントの動詞 ("чита́ть" чита́-ю, чита́-ешь), タイプBには語尾固定アクセントの動詞 ("говори́ть" говор-ю́, говор-и́шь) が入る.タイプCは移動アクセントで,1人称単数では語尾に,それ以外では語幹に移る ("писа́ть" пиш-у́, пи́ш-ешь). 動詞 "дать", "хоте́ть" などは上述の通り例外であり,稀少ゆえに覚えるのはたやすい.最後に第3の分類規準として子音交替の有無がある.чита́тьやговори́тьは音交替のないタイプであり,一方交替のあるものはその音とともに個々に覚える.例えば"сказа́ть" скаж-у́, ска́ж-ешь; "спроси́ть" спрош-у́, спро́с-ишьというように.

 この場合,重要なのは当該3規準すなわち (1) I型活用かII型活用か;(2) アクセントタイプは語幹固定,語尾固定,移動の3分類のどれか;(3) 子音交替があるか,あればその音;この3指標を動詞と見ればもれなくチェックしてその都度記憶するのである.コツはこの3要素以外は一切考えないこと.最初の2つの規準の組み合わせで2×3 = 6通りの活用型があり,第3の規準を加算して総計何種類の型になるか,筆者は数えたことがないし,知る必要もない.あと若干の例外的特徴もあるが,数個覚えるうち自然に身につく.入門書はたいてい語彙1000語を見込み,動詞は150-200語くらいか,この習得期間の動詞はひたすら上述の3規準に照らして個々に記憶する.実際はせいぜい50語程度覚えればもう勝負はつく.そこまででまず活用の型はほぼ出尽くすので,あとはもう新しい語に出会っても類推で活用が言い当てられる場合が増えてくる.正しく接近した場合,そういう類推能力は結構当てにしてよい.

 こういうわけでカルツェフスキー作品を読む傍ら,学習を無理なく進める要領を述べてみたわけだが,これでカルツェフスキーを敬遠すべき衒学的作品と断じたわけではない.そうではなく,このような上等な部類に属する教科書は,私たちがミニマム・エッセンスを習得後にこれを参照するのが得策であって,本作でしか得られない貴重な情報が余裕を持って見えてくる,それまで辛抱して待つべき作品だということである.冒頭に述べた,筆者の仏語正書法に対する無理な企ての轍を踏まないためなのである.

* * *

 ここまで動詞について書いてみたが,ロシア語の名詞は格変化型とアクセント移動の関係が一層複雑である.動詞の現在活用のアクセント型は上述のように3通りであるが,名詞は下位分類が複層していて簡単にいかない.そういう時,これもまた仏語の綴りと同様で一度に全部を覚えようとするのではなく,教科書の大まかな手順に従って,目の前にある単語をひとつひとつ辛抱強く覚えていくのがよい.

 そういった堅実な学習を続けて薄い入門書を終了後にカルツェフスキーの記述をひも解いてみると,これもまた動詞と同じように有益なページが見つかる.この本の名詞アクセントの記述は断然光っていて注目に値するので,それを紹介して拙文の締めくくりとしよう.筆者はこの記述を可能な限り精緻に図表化して,それを適当な時期に受講生に配ることにしている.配るとこんな細かいことを覚えなければいけないのかと教室が一瞬暗くなるが,次の瞬間に「これは決して一度に覚えようとせず,一通り教程をたどってから眺めてみると,その面白さが分かってもらえると思います」と言うことにしている.筆者はフランス語能力の非力も顧みず,冠詞も前置詞も辞書を引いてこのページを訳了した(しかしこれは語学で最もやってはいけないことである.離陸して最初の安定飛行に入るまで,すなわち入門書を読了するまでは原則として他の事に手を出すべきではない.逆に入門書を上げればすでに何らの制限はない).以下はその成果である.フランス語の和訳は多分間違っていないと思うが,もし間違っていたらどうかご容赦下さい.

参考文献

  • Chino E. 2001. 千野栄一.カルツェフスキーと,その「ロシア語学入門」// 窓Vol.119. 東京:ナウカ,2001. p. 8-12.

  • Karcevski S. 1947. Leçons de russe : Text russes avec vocabulaire. 2e éd. revue. Genève: Ecole d’Interprètes de l’Université de Genève, 1947. 49 p.

  • Karcevski S. 1948. Notes de morphologie russe. 2e édition complèment remaniée. Genève: Ecole d’Interprètes de l’Université de Genève, 1948. 41 p.

  • Karcevski S. 1956. Manuel pratique et théorique de russe / Université de Genève - Ecole d’Interprètes. Genève: Librairie E. Droz ; Paris: Librairie Minard, 1956. 217 p.

  • Karcevski S. 2004. Карцевский С.О. Система русского глагола // С.И. Карцевский. Из лингвистического наследия II. М.: Языки славянской культуры, 2004. С.27-205.

名詞の格変化とアクセント

Déclinaison et accentuation. Склоне́ние и ударе́ние

S. Karcevski

Manuel pratique et théorique de russe[1]

名詞のアクセントは3種類ある.

1° 固定アクセントl’accent fixe 全語形で同一の音節にアクセントが置かれる.このタイプには2種ある.(略号m.男性masculin; f.女性féminin; n.中性neutre. カッコ内の記述は訳出時の付加)

 a) 語幹固定アクセントaccent thèmatique, 例бара́н: бара́ны m. "羊" (шко́ла: шко́лы f. "学校", пра́вило: пра́вила n. "規則")

 b) 語尾固定アクセントaccent désinentiel, 例похвала́: похвалы́ f. "称賛", торжество́: торжества́ n. "荘厳"

 語末が -ани́н (-яни́н) で終わる名詞,例えばдворяни́н: дворя́не m. "貴族" のような語群はアクセントがこの接尾辞のどこかにくる語幹固定タイプである.ただし複数で接尾辞が単数と異なる形になるので,アクセントは同一音節にこない.無語尾の語形では語尾固定アクセントは必然的に語幹末にくる;複数生格похва́л, торже́ствなおまた単数主格топо́р m. "斧", ただし単数生格топора́, 単数与格топору́, etc.

 新しくつくられる名詞はそれぞれ(語幹あるいは語尾)固定アクセントle type fixeで,このタイプは現在生産的productifである.

2° 対称アクセントl’accent d’opposition すなわち単数系列と複数系列が列内で固定,数の違いで移動するタイプで約320語がこれに該当する;го́род, g. го́рода, d. го́роду etc., pl. n. города́, g. городо́в, d. города́м等このタイプは多数の語が属するが,(男性名詞以外の中性・女性名詞は)非生産的improductivesである.

 しかし男性名詞で複数主格語尾-ы (-и) に代えて-а́ (-я́) を用いる語の数が増える傾向にある.例えばофице́р m. "士官" の複主はофице́рыよりофицера́ が優勢になりつつある.この意味でのみこのアクセントタイプはある程度 "生産的productivité"と言える.

3° 移動アクセントl’accent mobile あるいは不規則アクセントirrégulier は単数系列と複数系列の内部でアクセント位置が変わる.このタイプには約150語が属する.

 単数主格でアクセント位置が語頭でも語末でもない場合は,固定アクセントである.しかしこの経験に基づく規則は例外が若干ある.男性名詞учи́тель: -я́ "先生", смотри́тель: -я́ "監督者", дире́ктор: -а́, инспе́ктор: -а́, апте́карь: -ря́ "薬剤師", etc. は対称アクセント・タイプであるのに対し女性名詞дере́вня "村" は不規則タイプである.(後述参照)

 名詞を覚えるのに有効かつ不可欠なことは単数主格と複数主格をアクセント位置と共に覚えることである.その語が移動アクセント・タイプでなければ,それだけでほとんどの名詞のアクセントを知るのに十分である.

対称アクセントの類型Variétés de l’accent d’opposition.

 a) 単数で語頭アクセント,複数で語末音節あるいはその一つ前の音節にくるタイプ:

 1° го́род: города́ m. "町" 他200語余りの男性名詞.

  жир: жиры́ m. "油" 他およそ60語の男性・単音節語.

  муж: мужья́ m. "夫"他男性名詞若干.

  де́ло: деда́ n. "事柄" ; вре́мя: времена́ n. "時間" 他30余語の中性名詞.

 2° ко́лос: коло́сья m. "穂" ; о́зеро: озёра n. "湖" 他若干の男性・中性名詞.

 b) 単数で語尾固定,複数で語末音節より一つ前の音節に移動するタイプ:

 1° вино́: ви́на n. "ワイン" 他30余語の中性で2音節語.

  пила́: пи́лы f. "のこぎり" など女性名詞の2音節語,なおまた男性名詞でもсудья́: су́дьи "判事".

 2° колесо́: колёса n. "車輪" ; веретено́: веретёна n. "糸巻" 若干の中性・多音節語.

 высота́: высо́ты f. "高さ", 若干の女性・多音節語.

移動アクセントの類型Variétés de l’accent mobile.

 a) 単数全形と複数主・対格で語幹アクセント,複数生格とそれ以降で語尾にくるタイプ:

 го́лубь: го́луби, -бе́й m. "鳩" ; бог: бо́ги, бого́в m. "神" など約35の男性名詞.

 сеть: се́ти, сете́й f. "網" など-ьで終わる女性名詞およそ60語.

 до́ля: до́ли, доле́й f. "部分", о́ко: о́чи, оче́й n. "瞳" (詩・雅語), у́хо: у́ши, уше́й n. "耳" なおまたдере́вня: дере́вни, дереве́нь, деревня́м.

 b) 単数主格で語幹アクセント,それ以外は語尾音節.以下諸例:

у́гол, угла́: углы́, угло́в m. "隅,角", у́горь, угря́: угри́, угре́й m. "ウナギ", у́зел, узела́: узлы́, узло́в m. "結び目".

 c) 単数主格と複数主格で語幹固定,それ以外で語尾固定.以下諸例:

гвоздь, гвоздя́: гво́зди, гвозде́й m. "釘", груздь, груздя́: гру́зди, грузде́й m. "チチタケ" (champignon), конь, коня́: ко́ни, коне́й m. "馬".

 d) 単数は対格以外で語尾固定,複数と単数対格で語幹アクセント (пила́の対称型の亜種).

коса́, ко́су́: ко́сы f. "大鎌" など約30語の女性名詞.

 e) 女性3音節名詞で単数は対格以外が語尾固定,複数は主・対格が語幹,それ以外が語尾:

борода́, бо́роду: бо́роды, боро́д, борода́м f. "あごひげ" など約40語の女性名詞.

 f) 若干数のпила́ のような女性2音節名詞は,語尾にアクセントがくるのが複数与格,複数造格,複数前置格というタイプがある;このタイプは語彙により単数対格で語幹に移動するものがいくつかある.

волна́, волну́: во́лны, волн, во́лна́м, во́лна́ми, во́лна́х f. "波,流れ" ; душа́, ду́шу: ду́ши, душ, ду́ша́м, ду́ша́ми, ду́ша́х f. "魂".

形容詞短語尾のアクセントAccentuation de la forme courte.

形容詞短語尾のアクセントは多くの場合が動詞бытьの過去 (был, была́, бы́ло, бы́ли)と同様になる.

形容詞短語尾男性形le masculinは一般にその長語尾形が語尾アクセントでなければ長語尾と同じである;горя́чий "熱い" : горя́ч; слепо́й "盲目の" : слеп. もし以下のような語形,すなわち:-оло-, -оро-, -еле-, -ере- を含む形容詞の短語尾形は,その音節の最初の母音にアクセントがある;молодо́й "若い" : мо́лод; коро́ткий "短い" : ко́роток; зелёный: "緑の" : зе́лен, etc.

形容詞短語尾女性形le fémininは傾向として語尾アクセントが多い:горяча́, слепа́, стара́, молода́, коротка́, зелена́.

形容詞短語尾中性形le neutreおよび複数形le plurielのアクセントは一般的な傾向として男性形と同じであるが,場合によりゆれがある:сле́по, сле́пы; мо́лодо, мо́лоды; зе́лено, зе́лены; ста́ро́, ста́ры́ ; ко́ротко́, ко́ротки́.

小石吉彦sova

October 2020

[1] Karcevski S. Manuel pratique et théorique de russe / Université de Genève - Ecole d’Interprètes. Genève: Librairie E. Droz ; Paris: Librairie Minard, 1956, p. 174-178.

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